<< 遠征終了! | main | F1 ストーブリーグ05/06 続報 >>

天才の定義

2005.08.15 Monday
すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER
すべてがFになる - THE PERFECT INSIDER - / 森 博嗣
(ネタバレを含む可能性があります。ご注意ください)
「数字の中で、7は孤独なの。BとDもね」

これは、作中で"天才"真賀田四季が、西之園萌絵に語った一説である。正直、なんのことやらさっぱりわからない。なんとなく、感覚的に"7が孤独"なイメージはあっても、論理的にそれを説明することはかなり大変なことだ。が、言われてみれば、確かに"7は孤独"なのだ。もちろん、BとDも。

森博嗣の名作「S&Mシリーズ」の第1作として"刊行"されたこの作品は、本来はシリーズの4作目として発表されたものだったそうだ。1996年に発表されたこの作品で、森は第1回メフィスト賞を受賞。以後、「有限と微笑のパン - THE PERFECT OUTSIDER」まで、S&Mシリーズを10作、書き上げている。

「すべてがFになる」では、シリーズの初作となるべく改稿がなされ、登場人物の人物像がイメージできるようになっている。が、だからといってそれに当てられる容量が大きいかというと決してそうではなく、むしろ少ないほうであると感じる。それでも人物像がつかみやすいのは、人物描写を、人物の言動からではなく、思考から行っているからだろう。

さて、本題。作品の副題となっている「The Perfect Insider」は、和訳すると「完全なる内通者」ということだ。S&Mシリーズは「理系ミステリー」と言われるように、国立N大学の工学部建築学科を舞台とした物語で、コンピュータ用語も多数出現する。そういう意味で、情報通信工学を学んでいる僕にとってはなじみの深い題材であり、また興味を惹かれるテーマでもあった。そして「内通者」がどこにいるのか、というと、当然コンピュータの中にいるのである。まさに「パーフェクト」な形で。

主人公である犀川創平と西之園萌絵は、国立N大学の助教授と学生という間柄。ともに論理的思考を得意とする二人だが、知識量と経験という意味において決定的な違いがある。そしてこの違いによる関係は、読者が犀川の推理を読んでいく上で、うまく解説をはさむ余地を与え、内容をわかりやすくしている。

ところで、僕はミステリー小説をあまり読まないたちである。なぜか。ミステリーというのは、十中八九事件性をはらんでいる。ネガティブな事件性だ。僕はそれがあまり好きではない。ゆえに、ミステリーはあまり読まない。

ただ、推理をしていくという過程、つまり「謎解き」はとても好きだ。地面にばら撒かれたたくさんのビー玉をひとつずつ拾っていき、ガラスケースにつめてひとつの絵にするようになぞが解けていくその快感は、とにかく読後の清涼感を味わわせるに十分なものだ。

僕が「すべてがFになる」を読むきっかけは、大学の友人に薦められたことだ。彼は森博嗣小説のファンで、現在もS&Mシリーズを読み進めている。彼が熱心にその魅力を語ることと、当時読む本がなくなってしまったことで、僕も「すべてがFになる」を読むことにしたのだ。

ただ、この本は非常に長いのだ。1冊目にしてすでに500ページを超えており、このあとどんどん長くなっていくのである。ミステリー小説の性格から言っても、すべてを詠み終わるのに相当に時間がかかるのは明白で、事実「すべてがFになる」を読み終わるのに2週間を要してしまった。

その時間を確保する覚悟さえあれば、間違いなくお薦めできる1冊である。天才の天才たる所以、謎から見える真実、そして何より、森自身の才能に、存分に酔いしれていただきたい。読後の清涼感は、間違いなく最高だ。

★すべてがFになる - The Perfect Insider -
著者:森 博嗣
刊行:講談社文庫
1998年12月15日 第1刷発行
2004年7月22日 第18刷発行
ISBN:4-06-263924-6
定価:733円(税別)
| at 23:37 | PermaLink | | comments(0) | trackbacks(0) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
supporting
stella cadente.netは、

ジェフユナイテッド市原・千葉
千葉ロッテマリーンズ
つくばFC


を応援します。

ばぐー

故郷・地元スキー。
categories
entries
archives
search
Feed