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ちょっとした物理のお話

2004.02.02 Monday
蒼穹の女神〈2〉アドラーアングリフオペラツィオン
蒼穹の女神〈2〉アドラーアングリフオペラツィオン / すずき あきら
(ネタバレを含む可能性があります。ご注意ください)
2ヶ月前、レビューでも紹介した「スカイワード」と同じタイミングで、「蒼穹の女神」第1巻を買いました。ジャケットイラストに描かれていた"アルバトロスD"のイラスト惹かれたのはいうまでもなく(別にミリタリーオタクではないんですけどね)、それから空を舞台にした物語というのに触手が伸びていたり、帯に書かれていた"墜落娘!"というキャッチフレーズがトドメになったり・・・・。

第1巻は、"女神中隊"と呼ばれる第111戦闘飛行中隊に配属された主人公エリィカ・キンスキー16歳が、中隊長であるミラージュ・フォン・トラッペンヤクトをはじめとする中隊の仲間たちと解りあい打ち解けあうシーンが描かれています。1巻目はとてもすがすがしく読み終えることができる1冊でした。

そしてその爽快な読了感は、第2巻では味わうことができませんでした。

第2巻では、貴族出身の女性パイロットフランカ・フォン・ホーエンフェルス19歳がニューフェイスとして111中隊にやってきます。代々続く軍人の名門家系の出であるフランカは19歳にして少尉であり、転属早々エリィカの属する1個小隊の小隊長に就きます。いかにも貴族らしい、"軍人の規律を重んじる"という考えを押し出すフランカに、エリィカは当初反発します。しかし、徐々にさわやかな空気流れる111中隊の雰囲気慣れてきたフランカは、エリィカや他の隊員たちの考えを理解し始めるようになり、エリィカもフランカ小隊の一員として自覚を持ち始め、中隊全体がまたひとつにまとまってきます。

さて、111中隊の主力戦闘機である「アルバトロスD」は第1次大戦中に実在した戦闘機ですが、本来は空戦仕様であり、対地上戦装備はほとんど施されていません。今回、来るべき作戦に備えるため、エリィカたち111中隊はアルバトロスの機底部に爆弾架を取り付け、50キロの対地爆雷2基を搭載しての地上攻撃訓練を行います。ちなみに、空から50キロの爆弾を投下して地上の目標に正確に当てることは簡単なことではありません。基礎物理学や数学を学んだ方ならわかると思いますが、物体を自由落下させると、その速度は物体質量と重力加速度(9.8[m/s2])の積で表されます。高度200mで水平飛行している状態から50キロの爆弾を投下すると、地上に到達するまでの時間は約4.5秒ということになります。仮に戦闘機が時速100キロで進んでいるとするならば、4.5秒間には125m進むことになります。つまり、目標から125m手前で爆弾をリリースすれば目標に正確に当てることができるわけです。ところが、コクピットからの目視距離が125mの状態では、爆弾は目標のはるか先に落ちてしまいます。目標に当てるためには、三平方の定理から算出されたコクピットからの距離は約235mになります。んが、当然ここに温度や大気の影響、地球の球面状態などが影響してくるわけで。

こんな複雑な訓練をこなしてのぞむ、帝国空軍の一大作戦。作戦名"鷲の攻撃作戦(アドラーアングリフ・オペラツィオン)"。南方のプールージュ戦線の敵支配地域に大規模な地上攻撃をかけ、敵主力部隊を一気に壊滅させようという壮大な作戦でした。111中隊は無事に作戦を成功させ、というか全員無事に怪我も泣く帰還し、またいつもの訓練の日常に戻っていました。そんな矢先、北方ノルディール戦線で帝国地上軍が新兵器を使用して敵基地を完膚なきまでに叩きのめしたという知らせが中隊に舞い込んできます。その新兵器とは、"ジクロロエチルサルファイド"、通称"マスタードガス"。"イペリット"とも呼ばれるこの糜爛性の毒ガスは、皮膚に触れただけで炎症を起こし、消化器官に入れば粘膜が刺激され、最悪の場合は死に至らしめます。空気に乗って漂う毒ガスは、敵だけでなく味方も、民間人も襲います。そして、エリィカの大切な人も。

第1巻はエリィカとミラージュが本当にわかりあうという「ハッピーエンド」でしたが、第2巻は人の死が描かれ、悲しみがこだまする「バッドエンド」とも言える終わり方。

この本を読んだ人の果たして何人が、"真の平和"を考えるにいたるでしょうか。
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