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【ネタバレあり】 ちはやふる−上の句・下の句− ひとりじゃない、と気づくとき

2016.05.12 Thursday

アナログゲームが好きです。モノポリーや人生ゲームみたいなボードゲームも好きだし、ちょっと前に本格的なポーカーを体験してすごく面白かった。学生の頃には花札にハマった時期もありました。残念ながら触れる機会はそれほど多くないですが、でもアナログゲームは好きです。

日本的な「和」の雰囲気も好きです。伝統文化にはわりと興味があって、先日歌舞伎を見に行ったのもそれがあってのこと。父が昔剣道をやっていたり、母がいま長刀をやっているので話を聞く機会も多くて、そういうのも影響あるかも。洋菓子より和菓子、ケーキより大福が好きです。

そんなわけで、かるたも興味がないわけではありません。ただ、競技かるたには今まで触れる機会もなかったので、原作も第1巻しか読んでませんでした。ですが、そこかしこで目にしたキービジュアルがとても綺麗だったのと、あと松岡茉優ちゃんが出演するということで、じゃあ見に行ってみるかということにしたのです。

以下、作品のネタバレを含みますのでご注意ください。たたみます。


この作品は、前後編の二部作になっています。前編「上の句」が始まって、短いアヴァンの後にオープニングタイトルが出ますが、これがとにかく美しい。古風な字体で書かれた「ちはやふる」というタイトルと、万華鏡のような色とりどりの幾何学模様が絶妙に合わさって、一瞬で平安時代にトリップしたかのような感覚に襲われます。小倉百人一首を題材にしたこの映画の世界観を強烈に印象付けるには、十分すぎる演出です。

主演は広瀬すず、共演に野村周平と真剣佑。この3人をひっくるめて主人公のような感じですね。「上の句」を見た直後の感想は、「とにかく広瀬すずがめちゃめちゃかわいい」でした。ちょっと切れ長の目つきと外上がりの眉、そして全てを吸い込みそうな黒い眼。自分の信念に決して曲げずどこまでもまっすぐな綾瀬千早という女の子を、まさしく体当たりで演じています。髪を耳にかけるしぐさや仲間を案じて祈る姿、その一つひとつが実に魅力的。

そうなんです。この映画、「人の撮り方」が非常に巧い。人物の表情に映る刹那の感情がきちんと見えるし、顔のパーツのアップや、時折挟まるスローモーションもとても効果的に使っています。競技かるたにおいては、歌の決まり字を聞き分ける「耳の感覚」もとても大事だそうですが、効果音を含めた音の演出もすごく巧くて、劇場ではおよそ味わいにくい「耳に痛い静寂」というのを体験することもできます。そのすべてが、人物を引き立てるための効果になっている。

制作したのはROBOTというプロダクション。なるほどと思いました。昨年の「気になった○○」にもあげた映画「リトル・フォレスト」もROBOTの制作。この作品も、巧みなカメラワークと音響効果で人間ドラマに深みを与えていました。こういう作り方をするのが巧いんでしょうね。

主役の3人と、瑞沢かるた部の3人、かるたの師匠と顧問の先生、ライバルの北央かるた部の面々、そしてクイーン。誰かひとりだけではなく、それぞれにきちんと焦点が当たっている。人と人がお互いに支えあい影響し合って生きているというのが、鮮明に描かれています。一度孤独を味わい、周りが見えなくなってしまった少年少女が、様々な葛藤を経て、再び仲間の元へ戻っていく。実に美しい、人間の物語です。

ストーリーや映像表現はとってもきれいで文句のつけようもない。それだけに、最後に流れる主題歌とのミスマッチが残念でなりません。この映画の主題歌はPerfumeの「FLASH」。この曲そのものはとてもすてきな曲で、僕も好みのものです。が、映画の空気感と致命的に合っていない。温かい人間ドラマの、緩くとも強い光を感じてじんわりとしたところに、あのバッキバキのテクノサウンドを突き刺されるんです。端的に言えば、ぶち壊しよ。なんであんなことにしちゃったかな。もったいない。

お目当てだった松岡茉優ちゃんは、「上の句」にはなんと1カットも登場しませんでした。ビックリだよ。思わず「ええーっ!?」って言っちゃったよ。「下の句」には「史上最年少のクイーン」役で登場。東京出身ですが、関西言葉も流暢に操っていました。さすが役者だなぁ。ところどころにコミカルな一面も出たりしていて、まぁそれも彼女のウリではあるんですけど、ちょっと蛇足に過ぎたかなぁという印象も。原作のクイーンもああいうキャラクタなんだろうか?

キーパーソンではあるけど主役ではないので、存在感を示しつつも主張は控えめといった感じ。個人的にはちょっと物足りなかったけど、そういう演じ分けがしっかりできるのも彼女の実力のうちですね。

映画の続編の制作も決まったそうです。「上の句」の最初に「3年前・・・」というキャプションが入っているし、「下の句」の最後は太一と新の名人戦、千早と詩暢のクイーン戦のシーンで終わるので、本来の時間視点に戻って物語が続くということなのかな。来年春のクランクインだそうで、早ければ年末には公開されるでしょうかね。いまから楽しみです。



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