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【ネタバレあり】シン・ゴジラ "素材"にされたゴジラ

2016.08.25 Thursday

僕はいわゆる「平成ゴジラ」世代です。はじめて見たゴジラ映画は、1989年の「ゴジラ vs. ビオランテ」。もともと父が大のゴジラファンで、父に連れられて映画館に行ったわけですが、以降95年の「ゴジラ vs. デストロイア」までと、その後の「ミレニアムシリーズ」のすべてを劇場で鑑賞。父は、ゴジラの由来や歴史についても熱心に聞かせてくれて、僕もいろいろ本を読んだりしました。昭和ゴジラは今に至るまで見ることができていませんけど、気づけば僕は、特撮とゴジラ映画にすっかりハマッていたのでした。

1998年にハリウッドがゴジラ映画をリメイクしましたが、これは「ゴジラ映画」とはとても呼べない、単なるモンスター映画でした。これも家族で見に行きましたけど、一同すっかりショックを受けてしまって、なので2014年のハリウッド版は見に行きすらしなかったのです。

ですが今回、東宝が久しぶりにゴジラ映画を製作すると。CGなどの現代的なテクノロジーも導入して、新しい特撮とゴジラを作ると。製作を指揮するのが庵野秀明というのがもうとにかくめちゃくちゃに不安ではありましたが、それでも「東宝が作るゴジラ映画」を楽しみに、映画館に脚を運んだのであります。

以下、作品のネタバレを含みますのでご注意ください。たたみます。
結論から言ってしまうと、はっきりと「悪い意味で予想通り」でした。東宝が作るゴジラに期待していたものの、結局は「庵野が作るとこうなってしまうのか」という感じ。心底ガッカリです。

この映画は、「人類共通の脅威が現れ、時間的制約も厳しいとき、日本人は、人間は、どうやってその脅威に立ち向かい、それを退けるのか」というところがテーマになっています。自らの命が突如危険にさらされた。そこから必死に逃げようとする人、逃げることを許されない人、高みから見ようとする人、そういうさまざまな立場の人たちの、本音と建前、感情、もどかしさ、信念、想い、そういうものを描いた映画です。高橋一生演じる安田が、世界中のスパコンに分子配列表の分散解析処理を依頼した際、ドイツの研究者が言った「人間を信じてみましょう」という台詞は、ある意味象徴的だと思いました。

だから、思うのです。「ゴジラである必要はなかった」。

この映画において、ゴジラは「人類共通の脅威」を分かりやすく示すアイコンとして使われています。「分かりやすく」というのは2通りあって、劇中の世界では、その巨大さと風貌、ありとあらゆるものをなぎ倒して闊歩する様で、人々に命の危険を感じさせる。もうひとつ、映画を見ている人たちに、過去のゴジラ映画のイメージを想起させることで「あれは恐ろしいもので、倒さなければならないもの」という概念を植えつける。新たなキャラクターを作って登場させるのではなく、すでにあるキャラクターで脅威を演出することで、余計な説明を省き、劇中の人物たちと視点を共有できるというわけです。この映画のテーマは人間、主役は人類なので、人々が立ち向かう脅威が分かりやすく描ければそれでよかった。その素材として、ゴジラが選ばれた。そういうことだと思います。

僕は、「ゴジラとはどういうものか」を語れるほど、ゴジラに心酔しているわけじゃありません。でも、平成ゴジラをずっと見てきた一人のゴジラファンとして、「僕の好きなゴジラ映画」というのはある。人類の脅威として描かれながらも、単なる脅威ではない。自然の強大さの象徴として、人々への警鐘として、つまりある意味「地球の化身」として存在していたゴジラ。生物化学や宇宙からの未知の脅威に対しては、さながら人類の味方のように敢然と立ち向かっていったゴジラ。三枝未希というキャラクターを通じて人類に何かを訴え続け、人類や生物と地球との間にあるものとして在り、役目を終えると静かに海に帰る。その後ろ姿は、劇中の人物たちにも、見ている観客にも、「文明と自然」について考えるきっかけを作っていました。あくまでも、人間と、そして自然と、共にあろうとする。それが、僕の好きなゴジラです。

「シン・ゴジラ」では、そういう大切なコンセプトがすっぽりとないがしろにされてしまっているように見えて、とても残念でした。先の通り、この映画の主役は人間で、人々の感情や振る舞いといったところに焦点を当てているので、そもそものコンセプトが違う。そんなわけで、これは僕の好きなゴジラ映画ではなかったし、僕の好きなゴジラ映画が庵野にズタズタにされてしまった、という思いなのです。

と、メタな視点はこれくらいにして、あとはディティールについて。

東京湾に怪獣が出現して、水上に背びれを見せながら多摩川を遡上したとき、これはまた新しい演出をしてきたなと思いました。今までも東京湾にゴジラが出ることは多々ありましたが、海岸から地上に上陸するのが常で、川に突っ込んでくることはあまりなかったのでね。ですがその後、地上に上陸した怪獣は、なんだかモグラのような謎生物。あれれ、ゴジラじゃなかったのか、こいつを倒しにゴジラが海からやってくるのね。そう思ってたんですが、そうではなくて、やっぱりこの謎生物がゴジラそのものだというじゃありませんか。こいつが一度海へ帰った後、容姿が大きく変化して巨大化した"ゴジラ"が、改めて相模湾に登場。いやいやちょっと待ってくれよ、『アレ(モグラの謎生物)が進化してコレ(ゴジラ)になったんだ!』とか言われても、全然ピンとこないんですけど。とまぁ、このあたりからすでに僕は「ゴジラ」として見ることはできなくなっていました。なんじゃこりゃ感ハンパない。

その"ゴジラ"も、眼が妙に丸く大きくてギョロついているとか、口がほとんど180度に近いくらいまで開いて真上を向くとか、背中から謎の光線をぶっ放してるとか、極め付けに尻尾に人型をした奇妙な造形が見えたりとか。違うなーと。これはゴジラじゃないなーと。キービジュアルや予告編で公開されたゴジラに対して「いやいやw」みたいな反応がネット上にあって、でも僕は「や、でもこれならだいぶゴジラなんじゃない?」と思ってたんですけど、やっぱりこれはゴジラじゃなかった。

冒頭のタイトルクレジットでも、東宝のロゴをわざと古めかしいフォントにしたり、あえて解像度を荒くしてみたり、「シン・ゴジラ」というタイトルのポップアップも昭和的な演出にしていたりします。僕はこういう小手先のオマージュが大っ嫌いなんですよ。バカにしてる。名の知れた俳優さんが、役名もつかない1秒足らずのほんのチョイ役で出ていたりしますが、そういうのホントいらない。そんなとこ求めてないんです。

一方で、司令室や管制の描写は僕は大好きなので、対策室や閣議の様子がけっこう細かく描かれていたのは楽しかったです。ああいう場面で明朝体の字幕をバカスカ打ってくるのは、エヴァンゲリオンでも見られた「庵野節」。あの演出も好きは好きなんですけど、今回はちょっと過剰だったかなー。一つひとつで文字が多すぎるのと、情報量も多くて目で追うのが大変でした。目で字幕を追おうとすると今度は耳が疎かになって、台詞が頭に入ってこなくなるというジレンマ。むぅー。まぁ、昨今の政治における「文字や情報が多すぎてわかりづらく面倒くさい」ことへのアンチテーゼなのかもしれませんけど。

軍備・兵器に関しては、自衛隊の装備ではゴジラに傷ひとつつけられないのに、米軍の投下爆弾だと大ダメージを与えられるのって、日米でそんなに装備に差があるもんなの?と思うんですけど、軍事に関してはド素人なのでよくわかりません。ただ、平成ゴジラで必ず登場していた「メーサー砲」は登場しませんでした。政治・軍事においては現実のものを忠実に再現したらしいので、架空の兵器が出てこないのは道理なんですけど、あれ好きだったんだよなー。楽しみにしていたことのひとつだったので、残念でした。

主演級は、長谷川博己と竹之内豊、それに石原さとみ。3人とも非常に個性の立ったキャラクターで、もともとのイメージともうまく相まって、文句なしに好演でした。常に背筋をピンと伸ばした好青年の長谷川博己と、渋く斜に構える竹之内豊、2人の政治家がスーツでピシッと決める隣で奔放に振舞うアメリカ女の石原さとみ。それぞれのコントラストも際立っていて、「人間が主役」であるという部分をしっかり引き出していたのは良かったと思います。英語で会話するシーンもありますが、3人ともメリハリのある英語を流暢に話していたので感心しました。ただこちらも、英語をしっかりと聞きたかったんですけど、そうすると字幕を追うのが大変で、忙しかったですね。

なので、「長谷川博己が見たい」「石原さとみが見たい」というように俳優さんの好演が目当ての人、また「庵野の新作を待っていた」という彼のファン、そして、現在の最新技術と文脈で新たに"特撮"というものを作ったらどうなるのか、という部分を見たい人、そういう人たちはとても楽しめるし満足できるものなんじゃないでしょうか。実際、これを「ゴジラ映画」として見なければ、クオリティは素晴らしいし、噂の4DX上映でもう一度見てみたいな、と思ったと思います。

「シン・ゴジラ」は、残念ながら僕の見たかった「ゴジラ映画」ではありませんでした。これとかこれみたいに『オタク』的に消費されてるのを見るとマジ気持ち悪いとすら思ってしまう。なんというか、「そういうのがやりたいなら別にかまわないけど、ゴジラとか過去のものを巻き込まないで勝手にやってくれよ」っていう、そんな感想の映画でした。

はー、言いたいこと言ってスッキリしたw

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